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本日の処方箋:クレヨンと風刺画
昔からテスト前になると、引出しを掃除し始めるといった逃避癖があります。その日も、差し迫った仕事から逃げるために、久しぶりに細々とした小物を片付け始めました。そして、げに久方ぶりに、そのクレヨンに再会したのです。パッケージを手に取った途端、なぜだか、胸の中で軟骨がこりこりと鳴りました。
なんだろう…このわだかまり?

小さい頃、住んでいたうちの近くに、割と大きな公園がありました。運動場があって、芝生があって、松の木がたくさん生えていました。そこで週に一度か二度見かけるご夫婦の姿がありました。

小学校に入ったか入らないかのわたしから見れば、おじいさんとおばあさんともいえる、年輩のご夫婦で、おじいさんは車椅子。確か左腕は、第二次大戦時の負傷で二の腕から下を切断されていました。
おじいさんは右腕で油絵を描きに、その公園に通っていました。おばあさんは、静かに笑いながら車椅子を押していました。わたしは、なんとなくそのご夫婦が好きでした。会う度に少しだけお話をしました。

ある日、おじいさんが「Caran d'Ache」というクレヨンをくれました。サクラクレパスよりも高価なものであるらしいことは、子どもにもわかりました。ぱかりとフタを開けると、既に数本は折れていました。でも、新品ではなくてそのおじいさんが使ったものだということが、余計に嬉しかったのでした。

近所に幼馴染が住んでいました。2歳年上で、その後美術系の高校から美大へ進学した女の子です。あるとき彼女に、おじいさんからもらった「Caran d'Ache」を見せました。自慢したかったのです。わたしには本当の価値はわからないけれど、彼女にならわかると思ったのでしょう。そんなわたしの予想は当たったようなはずれたような。

「ああ、これ。これよりも○○の方が使いやすくて、実際はいいやつなんだよ」とわたしの知らないメーカーの名前を言われました。わたしはなんだかとても悔しくなって、でも何が悔しいのか自分でもよくわからなくて、涙目で「Caran d'Ache」の缶を裏返しました。そこにはうっすら値札が貼ってあったからです。彼女は一瞥すると「高いって言いたいんでしょ?」と軽蔑したように言いました。

そう、わたしは高いのだということしか言えませんでした。しかも無言で指し示すことしかできませんでした。わたしにとって、そのおじいさんからもらったということが、どんなに嬉しいことなのか、きちんと伝えられませんでした。

彼女とそれをきっかけに話さなくなったとか、そういうことはありません。その後も10年以上、幼馴染として付き合いが続いていたと思います。でも、この胸の中でこりこりと歯ごたえよく鳴る軟骨は、きっとそのとき「わたしが伝えられなかったわだかまり」なのです。

全然脈絡のない話ですけれども。
デンマークに始まった風刺画騒動を見ていて、ぽうやりとなんだか似てるなと思ったのです。
放火した人たちは、きっと一部の人たち。そういう人も確かにいるのでしょう。それは、パッケージを裏返すことしかできなかったわたしと同じように。でも、その行為の陰にはたくさんの人の「悲しさ」が詰まっているよな気がしたのです。本当は、そこを話さなくちゃ、理解しなくちゃ、何も始められないのかもしれない。

本日の処方箋:クレヨンと風刺画
 お薬の種類:睡眠薬

ごりごりと本日休診。
| 睡眠薬 | 04:21 | comments(6) | trackbacks(0) |
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ご無沙汰しておりマス。1週間ばかり留守にしておりまして、確認が遅くなりましたん。

アポロさん、そう!そう!そうなんですょ。伝えきれてないことはわかっているのに、本当に何て言ったらいいのかはよくわかんなくて…今でもそういうことはいっぱいいっぱいあって。
それって自分だけじゃないのかなって。伝えられないことは悲しいけど、そういうどうしようもないものが他の人にもあるのかもって思ったら、もっとお互いに理解し合えたりするのかなぁ…と、ふと。
アポロさん、ぐるぐるしたうえのコメントありがとうございます。行間もぎっしりみっちりいただいた…と思いマス。

Orgさん、そうですね。カッコよい大人になりたい…です。「カッコよい」ってなんかよい言葉ですね。「いい」より「よい」が好きです。関係ないですけど…。

ぱんだったさん、こちらこそご無沙汰しておりますん。ぐるぐるしたエントリーの中で、汲み取っていただけたことに感謝。
| 内服 | 2006/03/10 10:43 PM |

ご無沙汰です
相変わらず素敵な文章書いてますね
沁みる
| ぱんだった | 2006/03/08 1:04 AM |

悲しかったはずのモノが、楽しく素晴らしくなるでしょうね。

カッコよい大人とはそういう事をやってけるヤツなんだろうと思います。




| Org | 2006/03/06 7:50 PM |

コメントするのに時間が経ってしまいましたが、この日記が書かれてから結構スグに読んで、たまらない気持ちになったのでした。
今でも自分の本当の気持ちをきちんと形にすることができなくて、しかも自分の気持ちって何なのか、実は自分でもよく分かっていなくて、でも「本当はそうじゃなくて」といったことを伝えられなかいことが悲しくて、悔しくて、でももうそのタイミングを逃してしまったことは分かっていて、グルグルとしてしまいます。
一人で勝手に。

こういう気持ちと「風刺画騒動」と繋げられる内服さんに、改めて感嘆の声を密かに上げる私でした。

これも、何かいてるのか、よーわからんコメントになってしまったけど(笑)
| アポロ | 2006/03/02 6:51 PM |

bonoさん、どうもです。
コメントいただいて、改めて書いたものを見たら、うーん何が言いたいんだがわかんない話ですよね…。後で追記するかも…デス。そんなエントリーにコメントいただき、ほんとありがとうございます。
| 内服 | 2006/03/01 5:59 AM |

>わたしには本当の価値はわからないけれど、
>彼女にならわかると思ったのでしょう。

分かりそうな人に分かってもらいたい気持ちは
良く分かります。大抵、内服さんのように「裏目」に
出てしまうのですが・・・。

>何が悔しいのか自分でもよくわからなくて

価値を分かってないのでこの悔しさには理由がありません。
でもその本質は、「おじいさんからもらったという」価値
なのですね!!! 
私も長い間の引っ掛かりが落ちてすっきりした感じに
なりました。書いてみないとわからなかったことですね。
| bono | 2006/02/27 11:04 PM |










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